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2006.09.27

コミック読後つれづれ。

袴田ピアノ教室 (コミック)/中村 かなこ (著)

知人に「…だからイヤなのよ!」が口癖のヒトがいる。
この店は混んでるからイヤなのよ、この作者は説明口調が多いからイヤなのよ、このタレントはXXだからイヤなのよ…と、「なぜ、どこがイヤか」を必ず説明してくれる。
…私は貴女のそこがイヤなのですが。まぁそれはさておき。

小学校から高校まで、12年間、エレクトーンを習っていた。YAMAHAのグレード(級)でいえば『6』までは行った。講師になろうとか、ブライダルプレイヤーになろうとか思っていたわけではない。ただ、習いたかった。

その頃は、聴きたい曲があると、まず楽譜を探した。楽譜がなければ、耳コピの真似ごとをした。「弾きたい」と思うのはそれからだ。まず、聴きたかった。自分が聴くために弾いた。曲を手に入れるには、レコードを買うかFMをエアチェックするかくらいの選択肢しかない時代、もともと形のない「音楽」というものを、どうにかして自分の手元に置きたかったのかも知れない。
だから、鼻歌のように、よく、軽く弾いていた。鼻歌のようなものだから、さして熱心な練習もしなかった。思いついたら弾き、聞き終わったら満足していた。

苦労がなかったわけではない。
私がもっとも苦労したのは、エレクトーンそのものの機能だった。
───ピアノという楽器はほぼ不変のものだ。ギターもそう、吹奏楽器もそう。だが電子楽器は違う。どんどんアップグレードしていく。技術革新とともにモデルチェンジし、マシンスペックが上がり、それにつれて、プレイヤーに求められるテクニックも変わっていく。
少し上手くなったかな、と子供心に思いはじめた頃、エレクトーンは「リズムボックス」という機能を搭載しはじめた。打楽器パートをスイッチONで自動演奏してくれる機能だ。
これに、のれない。長縄跳びに入るのも苦手なのだが、このリズムにのって演奏するのがなかなかできない。
もっと辛かったのは、「そこを、家で練習してきなさい!」と言われる事だ。私の持っている機種はその機能が付く前のものだった。練習しようにもその機能がない。買い替えるには高額すぎる楽器だ。「知り合いのお姉さんは、いちばん最初のいちばん下の機種で、何でも弾けたのよ? 努力すればできるの!」と例を挙げられてはグウの音も出ない。
結局、数年がかりで買い替えてもらったが、もとより数年に一度モデルチェンジをする『機械』だ。今度はインターフェイスがレバーからボタンへ全面改良になり、ピアノなみのタッチレスポンスという機能がようやく装備され、また戸惑う羽目になった。

もともと、練習嫌いで、うまくはなかった。うまくないから、弾くのが嫌だったのかも知れない。そう思っていた。
───しかし、この「袴田ピアノ教室」の中で『ピアノを殴ってでもうまくなりたい』から、『歯ぎしりするように練習する』というくだりを見て、あぁ、と思った。目からウロコが落ちたというか、ホッとした。
「うまく弾けない」のを「くやしい」と思ってもいいんだ、と。

練習不足で弾けない、くやしい、と感じる事すら、恥ずかしい事だと思っていた。「くやしかったら練習しなさい!」という言葉がどこかで食い違って、いつの間にか、そういう感情を抱いてはいけないのだと洗脳されていたようだ。弾くなら、最初から、完璧に心まで美しく、と。───んなのありえねー。
しかしそれゆえ、練習で下手な音を響かせてはいけないと思い、だから弾けない、弾けないから上手くならない、そういう悪循環に陥っていた。
弾けないから、くやしいから、練習する。それで良かったんだ。───今さらながらに、そう気づいた。

努力なんてものは、「ダサくて、ウザくて、暑苦しくみっともない」もんだ。それでいいんだ。それを「ウザい」と言われたって、それがどうした。最終的に「完璧で、綺麗で、人を惹きつける結果」が出れば、それで『勝ち(価値)』じゃないか。

いまさらそんな事が分かっても、エレクトーンは実家の引っ越しに伴って手放した。もう買う事はないだろう。今の機種がどのくらいの機能を持っているのか、オソロしくて見る事すらできない。

私が、「…だからイヤなのよ!」と思うのは、マンガなりドラマなりをウッカリ見てしまった後に、こういう事を延々と考えてしまう自分自身だ。
映画を見るのもTVドラマを見るのも、最近は小説やマンガを読むのも、これだから昔からイヤだ。それの「なぜ、どこが引っかかるか」を取っ掛かりにして、自分の欠点をウツウツと考えてしまうから。

───ただ最後に、中村 かなこ 氏の「袴田ピアノ教室」に収録されている7作品は、読後に必ずホッとさせる、読者を前向きにさせる、気持ちのいい話ばかりである。それと、主人公の袴田慎一郎先生が、ステキ眼鏡キャラであることを、付け加えておく。

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